日本史

日本の軍艦の命名規則 旧国名、山岳名、河川名

 欧米では「ビスマルク」「クイーン・エリザベス」のように軍艦の名前に歴史上の人物などの名前を用いるのに対して、日本では軍艦の名前には人名が使われていない。

 これには明治天皇の意向が強く反映されていて、軍艦に人物名をつけた場合、沈んでしまったらその人物に失礼であると考えていたとされる。また、都市名がついた軍艦が沈んだときも、その都市に悪影響を与えるとして避けられている。

 日本軍の艦名の付け方がしっかりと定まったのは1905年で、戦艦は旧国名、一級巡洋艦(重巡洋艦)は山岳名、二級巡洋艦(軽巡洋艦)は河川名をつけることになった。

 後に空母が登場すると、空母には「飛行する瑞兆動物の名前」をつけることになった。瑞兆動物とはめでたい意味がある動物のことで、龍、鶴、亀、麒麟などがいる。亀と麒麟は空を飛ばないので空母には龍、鶴、鳥の名前が使われている。

戦艦は旧国名

  • 大和(大和国、現在の奈良県)
  • 武蔵(武蔵国、現在の東京都、埼玉県及び神奈川県の一部)
  • 長門(長門国、現在の山口県)
  • 陸奥(陸奥国、現在の青森県)

重巡洋艦は山岳名

  • 青葉(青葉山、京都府と福井県の境)
  • 妙高(妙高山、新潟県)
  • 愛宕(愛宕山、京都府)
  • 高雄(高雄山、京都府)

軽巡洋艦は河川名

  • 長良(長良川、中部地方)
  • 鬼怒(鬼怒川、関東地方)
  • 利根(利根川、関東地方)
  • 大井(大井川、中部地方)

航空母艦は瑞兆動物

  • 蒼龍、飛龍(龍は伝説上の生物、蒼龍は青い龍のこと)
  • 瑞鳳(鳳凰、中国の伝説上の鳥)
  • 翔鶴、瑞鶴(鶴は長寿の象徴)

例外と駆逐艦、自衛隊

 第二次世界大戦で使用された「赤城」「加賀」「信濃」は空母であるのに、上記の法則に当てはまらない。「赤城」は巡洋戦艦として建造されたために山岳名、「加賀」と「信濃」は戦艦として建造されたために旧国名の艦名がつけられた。また、戦艦の「金剛」「榛名」「霧島」も最初は巡洋戦艦だったので、重巡洋艦と同じく山岳名がつけられている。

 ちなみに駆逐艦には気象や植物の名前がつけられていて、「朝霧」「黒潮」「松」「梅」など、妙に風流な艦名が見られる。

 戦後の自衛隊は「こんごう」「かが」「みょうこう」など、過去に使用された艦名をひらがなにして使っている。漢字だと旧日本軍が連想されることが理由だという。

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