日本史

鎌倉時代の始まりは1192年の「イイクニ作ろう鎌倉幕府」ではなくなった

2023年12月30日

かつて受験生は「イイクニ作ろう鎌倉幕府」と呪文を唱え、鎌倉時代の始まる年を暗記したものだった。しかし、現在の歴史の教科書には「1192年に鎌倉幕府が成立」という文字は書かれていない。

源頼朝が征夷大将軍に任命される

1192年は鎌倉幕府の創設者である源頼朝が征夷大将軍に任命された年で、これ自体は昔も今も変わっていない。かつては、源頼朝が征夷大将軍に任命されたことをもって鎌倉幕府が成立したと考えられていた。

後に室町幕府を開いた足利尊氏、江戸幕府を開いた徳川家康も征夷大将軍に任命されていて、武士の最高位が征夷大将軍と認識されている。しかし源頼朝の時代は、別に征夷大将軍が武士の最高位という決まりはなかった。

実際、源頼朝が朝廷に求めていたのは「大将軍」という位であり、別に征夷大将軍である必要はなかった。朝廷では源頼朝にふさわしい称号として、「惣官」「征東大将軍」「征夷大将軍」「上将軍」の四つが候補に挙がっていたという。

このうち「惣官(そうかん)」は平宗盛、「征東大将軍」は源義仲が任命されていた。二人とも源頼朝と敵対して死んでいるので、この二つの称号は使えない。残った征夷大将軍と上将軍のうち、征夷大将軍は東国を支配するという意味があり、かつて坂上田村麻呂が任命されたことがあるので、ふさわしいものとして採用された。

このような経緯で決まったものなので、源頼朝が征夷大将軍に任命されたことは大きな意味を持たないと考えられるようになった。こうして1192年に鎌倉幕府が成立したと見なすのはやめたのだという。

鎌倉時代の始まり

それでは鎌倉時代はいつから始まるのか。これにはいくつもの説があって、源頼朝が鎌倉に入った1180年、朝廷から東国の支配権を認められた1183年、公文所と問注所(行政府や裁判所にあたる)が設置された1184年、全国に守護・地頭の設置を認められた1185年、などが候補になっている。

1192年1月1日に「平安時代は昨日で終わり、今日から鎌倉時代になりました」と宣言されたわけではないので、いつから鎌倉時代が始まったのかは学者によって考え方が異なるというわけ。結局、今の教科書には「鎌倉時代は何年から始まる」という記述はないという。

こうして受験生ががんばって覚えた「イイクニ作ろう鎌倉幕府」は、意味のないものになってしまった。

-日本史