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マレー沖海戦 戦艦が初めて航空機に撃沈される

 日本軍の南下を予想したイギリスは、東洋の拠点シンガポールに戦艦5隻、巡洋戦艦1隻、航空母艦3隻という強力な艦隊を配置する計画を立てた。

 しかし実際にはドイツの相手で精一杯だったため、派遣できたのは戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」、そして駆逐艦4隻に留まった。それでもプリンス・オブ・ウェールズは最新鋭戦艦であり、十分に強力なものだった。

 このとき東南アジアに配備されていた日本の戦艦は「金剛」と「榛名」だったが、どちらも元々巡洋戦艦で装甲が薄く老朽艦なので、イギリス東洋艦隊の存在は脅威だった。

航空機による攻撃

 真珠湾攻撃が行われる前日、イギリス東洋艦隊はマレー半島攻撃を狙う日本軍に打撃を与えるため、シンガポールから出航した。

 日本海軍は、付近にいた重巡洋艦5隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦4隻を向かわせた。相手には戦艦がいるため不利ではあるが、夜戦に持ち込めば勝機はあるとの判断だった。しかし日本艦隊はイギリス艦隊を発見できなかった。

 そこで日本軍は新鋭機の一式陸上攻撃機でイギリス艦隊を迎え撃つことにした。当時、航行中の戦艦を航空機による攻撃で沈めるのは不可能とされていたが、やむを得なかった。

 イギリス東洋艦隊も日本軍航空機からの攻撃は予測していたが、沖合を航行すれば問題ないと考えていた。日本軍の攻撃機はそんなに遠くまで飛ぶことはできないと思っていた。また、そもそも東洋艦隊司令官フィリップス提督は航空機の攻撃は戦艦にとって脅威ではないと考えていた。

集中攻撃を受けるイギリス東洋艦隊

 最初の空襲では攻撃機8機が攻撃を行ったが、2機が対空砲火で炎に包まれ、残りも追い払われた。イギリス戦艦の対空砲は日本やアメリカのものよりも強力だった。

 続いて攻撃機17機が魚雷を投下して、2本がプリンス・オブ・ウェールズにに命中した。プリンス・オブ・ウェールズは発電機が故障して対空砲が使用不能になり、浸水が始まった。さらに攻撃機8機がレパルスに向けて魚雷を投下して、3本が命中した。

 しばらしくして、攻撃隊第二波が到着した。26機の攻撃機が魚雷を投下し、プリンス・オブ・ウェールズに4本、レパルスに5本命中した。レパルスは対空砲を乱射しながら沈んでいった。

 次に到着した攻撃機17機はプリンス・オブ・ウェールズに500キロ爆弾を投下し、そのうちの二発が命中した。プリンス・オブ・ウェールズは爆発を起こし、ゆっくりと沈んでいった。

 なお、イギリス東洋艦隊の駆逐艦4隻はプリンス・オブ・ウェールズとレパルスの乗員救助を行い、日本軍もそれを妨害しなかったため無事にシンガポールに帰還した。

 プリンス・オブ・ウェールズとレパルスは航空機の支援がない状態で、80機以上の攻撃機に襲われた。シンガポールにはイギリス軍の戦闘機が待機していたが、フィリップス提督は支援を求めなかった。これだけの集中攻撃を受ければ沈没するのも当然な気がするが、当時は航行中の戦艦が航空機のみの攻撃で沈められた例はなく、なおかつ海軍大国イギリスの最新鋭戦艦が撃沈されたことは世界に衝撃を与えた。

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