ヒトラーは人間に優劣があると考えていて、特に優れた人種を「アーリア人」であると考えていた。
アーリア人とノルディキズム
ヨーロッパとインドの言語に共通点が多いことから、もともとヨーロッパ人とインド人は共通の民族だったという説があり、これらの人々はインド・ヨーロッパ語族と呼ばれる。このインド・ヨーロッパ語族のことを「アーリア人」と呼ぶ。
アメリカの社会学者リブリーは、ヨーロッパ人を三つの人種に分け、それぞれに優劣をつけた。
ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、イギリスなどの「北方人種」、イタリア、ギリシア、スペインなどの「地中海人種」、ドイツ南部、フランス南部、ロシア、オーストリア、東欧などの「アルプス人種」。頭が長いほど優れた人種であり、「北方人種」「地中海人種」「アルプス人種」の順に優れているとした。
この北方人種が優れているという思想を「ノルディキズム」といった。
金髪、碧眼、白い肌
ヒトラーはこれらの考え方が好きだったようだ。アーリア人が最も優れた人種であり、ナチスの象徴であるハーケンクロイツ(鉤十字)はアーリア人を表していた。
ヒトラーによると、アーリア人に含まれるのはヨーロッパ人、インド人、イラン人、小アジア(トルコ)人に限られる。アラブ人とユダヤ人はインド・ヨーロッパ語族ではなくセム語族なので、アーリア人ではなかった。もちろん、黄人や黒人もアーリア人ではない。
日本人もアーリア人ではなかったが、ドイツと同盟を結んでからは「名誉アーリア人」として認めた。
ヨーロッパ人の中にも優劣があり、ドイツと同じく優れた人種である北欧に対しては、占領後も寛大な政策をとり、劣った人種であるポーランドやロシアには、過酷な政策を実行していた。
優れた人種の特徴は「金髪」「青い瞳(碧眼)」「白い肌」であり、「高身長」「美しい筋肉」も必要だった。ナチスは国民にスポーツをするよう勧めて、親衛隊にもこれらの特徴を持つ者を優先して採用した。また、優秀な遺伝子を増やすために、ドイツの若い女性を手厚く支援した。
一方で「劣等民族」であるユダヤ人やスラブ(ロシア)人の繁殖は抑えねばならないと考え、迫害していった。ヒトラーにとって劣等民族は、支配しなければならない存在だった。
ちなみにヒトラー自身は金髪ではなく、碧眼でもなかった。